事故は突然起きるものです。
被害者の方は、事故による痛みで苦しみ、また、仕事や家事が思うようにできず、大きなストレスを抱えることになります。
多くの方が、事故前の状態に戻してほしいと願います。
しかし、残念ながら時間を巻き戻すことはできません。
事故前の状態に戻ることはできないのです。
民法という法律でも、加害者には被害者を事故前の状態にまで戻す義務はなく、金銭での損害賠償をすれば事故の責任を果たしたとされます。
そうすると、交通事故に遭ってしまった方は、できる限り適切な損害賠償をしてもらえるよう、加害者や損害保険会社に対応しなければなりません。
このような対応は事故直後から必要になります。
このページでは、事故直後から損害賠償金の支払いまでどのように進んでいくか、それぞれの場面ごとにどのように対応すべきかを解説しています。
1.交通事故の発生
多くの人は事故直後警察に通報し、現場に来た警察官に事故状況を説明することと思います。
入院された方の場合、その場で警察官の事情聴取ができないので、退院後に事情聴取が行われるか、警察官が病院まで来て、病院で事情聴取がされます。
警察は、「事故処理を早く進めたい」「警察が考えた事故状況に沿うような供述が欲しい」といった理由で誘導的な質問をしたり、答えを押し付けるような質問をしたりすることがよくあります。
このような質問があっても、警察に押し切られず、自分が体験した事故状況と自分の考えを押し通しましょう。
自らの言い分を曲げずにいれば、警察も耳を傾けてくれるようになります。
重要なポイントは、必ず事故直後に事故現場の写真を撮影することです。
事故後に信号ができたり道幅が広くなったりと変化することがありますから、事故当時の写真は、事故態様の解明の有力な証拠になります。
また、時間の経過により、事故の相手方の事故状況に関する証言が変わることがよくあります。
例えば、当初は交差点で「一時停止をしていなかった」と発言していたのに、半年後には「一時停止をした」と証言を変えるといったことが考えられます。そのため、相手方がこちらに有利な証言をしたときには、その時点で相手方に証言を書面にしてもらうことができると良いです。
書いてもらえなくても、相手方の発言内容をメモしておくと、後々証拠とすることができます。
メモを残すときは、いつの発言かといつ書いたメモか分かるように、日付を書いておいてください。
軽微な事故の場合には、相手方から「警察には届けず内々に済ませよう」と言われて警察に届けないということがあります。
しかし、被害者にとって、事故の届けをしないことには一つもメリットがありません。
事故直後に届けられなくても、後から届けることができますので、届けていない方はすぐに警察に事故の届けをしてください。
また、むち打ちなどの症状の場合、事故直後には何ともなくても、後になって首が痛くなるということもあります。
このような場合、当初は物損事故として届けていたとしても、後から人身事故に切り替えることができます。
したがって、物損事故として届けていたところ後々体に異変が生じたという場合も、警察に連絡をして人身事故に切り替えるようにしましょう。
2.治療
入院されている方、又はそのご家族は入院中の治療に専念してください。
入院中に事故の損害賠償で何か問題が起こることはほとんどないので、安心して治療に集中していただければと思います。
退院後は、まずは治療をしていた脳外科や整形外科に通院をすることになります。
首、肩、腰などに痛みがある被害者様は、一度整形外科で治療した後、どのような治療形態になるかは3パターンに分かれます。
- そのまま整形外科に通院する
- 整形外科に通いながら、接骨院にも通院する
- 整形外科はやめて、接骨院に通院する
大切なのは、交通事故の被害者様に効果のある治療をすることです。
そして、どのような治療が一番効くのかは人によって違いますので、一概にどれがいいとは言えません。
ただ、当事務所でご依頼を受けた経験からすると、1と2が、治療効果が高いように思います。
この3パターンのどれを選択するのかで今後の賠償額が変わってくる可能性があります。
よって、まだ治療中であっても、弁護士に相談をしてアドバイスを受けながら、治療をした方が良いでしょう。
なお、損害保険会社は接骨院に通わせてくれないと思っている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
損害保険会社はなるべく効果の高い治療をして、早く被害者様に回復してもらいたいと考えているはずですから、接骨院に通院したいと伝えれば、認めてくれることが多いと思います。
また、皆様の車両には保険がついていることと思います。
その保険には、弁護士特約は付いていませんか?
弁護士特約は、事故の処理を弁護士に依頼し、加入している保険会社が弁護士費用を支払ってくれるというものです。
自分の保険に弁護士特約が付いているかどうかは、加入している保険会社にお問い合わせください。
弁護士特約に加入されている場合、弁護士費用をご自身で負担する必要がないわけですから、なるべく早い段階で弁護士に依頼をした方が得です。
このようなことから、まだ治療中であっても、弁護士特約に加入しているのであれば、早い段階で弁護士に相談と依頼することをおすすめします。弁護士が付いているというだけで、安心度はかなり変わるのではないでしょうか。
3.休業損害の支払停止・治療の打ち切り
治療を開始してからある程度の期間が経過すると、損害保険会社が毎月支払っていた休業損害の支払いを停止したいと申し入れてくることがあります。
また、通常は被害者様が治療をするとき、病院や接骨院で治療費は負担しないで治療を受けていると思います。
これは後から損害保険会社が病院などに治療費を支払うので、無料で治療ができるのですが、損害保険会社が「そろそろ完治の時期だと思うので、治療を終了してもらいたい」と申し入れてくることもあります。
★休業損害について詳しくはこちら
4.治療の終了(症状固定)
完治した場合は治療終了になります。
また、治療を続けても大幅な改善が見込めず治療を終了しても症状が悪化することがないと思われる状態、つまり治療の効果が認められなくなってきた状態のことを『症状固定』といい、この状態になると治療を終了します。
症状固定後は、後遺症の問題となります。
症状固定以降は、ご自身で治療費を負担することになります(国民健康保険や健康保険を使うことができます)ので、いつの段階で症状固定とするかは重要な問題です。
症状固定までの期間はケースによってさまざまです。
けがの程度や、本人の気力や体力、年齢などによっても変わります。
医師と相談しながら必要なだけ治療を続けることが重要です。
5.後遺障害の等級認定
症状固定であると医師が診断したら、その時点で残っている症状について、交通事故による後遺障害として認められるかどうか、第三者機関に審査してもらいます。
後遺障害の認定とは、交通事故によって残った症状「後遺症」について、正式に「後遺障害」として認定してもらう手続きです。
交通事故の後遺障害には、14段階の「等級」があります。
後遺障害の認定を受けられたら、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料や賠償金を支払ってもらうことができます。
反対に言えば、後遺症があるにもかかわらず、後遺障害認定を受けない場合、必要な賠償金を支払ってもらうことができないので、被害者には大きな不利益が生じます。
後遺症がある場合には、必ず後遺障害認定の申請をしましょう。
★後遺障害認定の流れについて詳しくはこちら
6.示談交渉
完治後又は後遺障害の認定を受けた後、相手の損害保険会社と示談交渉を進めます。
示談交渉とは、話し合いによって示談金(賠償金、保険金)を決定する方法です。
発生した損害額や過失割合などを決めていきます。
相手の損害保険会社からの提示額に納得がいかない場合には、いくつかの選択肢があります。
- 被害者様から再提案をする
- 弁護士に依頼をする
【1. 被害者様から再提案をする】
これくらいの額が妥当だと思うという目安があれば、被害者様から相手の損害保険会社に伝えてください。
損害保険会社が検討し,上乗せをしてくれることもあります。
【2. 弁護士に依頼する】
納得いかないけど、妥当な金額か分からないという場合には、弁護士に損害賠償請求を委任し解決を依頼することをお勧めします。
その場合にはどのような事務所を選ぶかが重要です。
経験豊富な、交通事故に強い弁護士を選んで解決を依頼してください。