事故で脳に外傷を受けてしまった場合、怪我は治ったものの、認知障害や人格障害がおこり、就労や生活が制限され、時には社会復帰が困難となることがあります。
これは脳に後遺障害が残ったもので、このような後遺障害を高次脳機能障害と言います。
高次脳機能障害は、交通事故との関係では、後遺症に該当するか、該当するとして何級に該当するかが問題となります。
高次脳機能障害を疑わせる症状には、①知的障害、②性格、人格の変化があります。
高次機能障害を疑わせる症状①―知的障害
【具体例】
- 記憶障害:物忘れ、今見聞きしたことを記憶できない
- 注意集中障害:注意・集中ができない
- 遂行機能障害:判断力の低下、計画的な行動や複数の行動ができない
- 病識欠落、自己洞察力の低下:自分の障害の程度を過小評価する
道が覚えられなくて非常に困っているというご依頼者様がいました。
また、日常的な約束や、今日どこへ行く、ということもすぐ忘れてしまうので、携帯電話のアラーム機能をフル活用して、日常生活を送っているという方もいらっしゃいました。
障害が重度になってくると、以前とは明らかに変わってしまって仕事も辞めざるをえなくなり、日中は庭をずっと見ていて、何をするにも声掛けがないとできないという方もいらっしゃいます。
高次機能障害を疑わせる症状②―性格、人格の変化
ご家族やご友人から見て、人が変わったと感じるような性格の変化が生じることがあります。
【具体例】
- 過食、過剰な動作・大声を出す、自己抑制がきかなくなる
- ちょっとしたことで感情が変わる
- 不機嫌、攻撃的な言動や態度が増え、暴言、暴力をふるう
- 自発性が低下する、幼稚になる、羞恥心が低下す
- 人付き合いが悪くなる、わがままになる
- 反社会的な行動をする
後遺障害と認められるためには
高次脳機障害が交通事故の後遺障害と判断されるためには、物忘れ、集中力の低下、性格の変化などの高次脳機能障害を伺わせるような症状が出ていることが必要です。
その他にも、高次脳機能障害が1級、2級、3級、5級、7級など等級の高い後遺障害(「脳の器質的な損傷による障害」)と判断されるためにはいくつか条件があると考えられています。
高次脳機能障害は9級、12級、14級などの等級に該当する場合もあります。
その場合には、以下の①~③の該当性は緩やかに考えられることになります。
①事故直後に意識障害があったこと
事故直後に、気を失ったり、自分が誰だか分からないような状態が一定期間継続したりしたことが、高い等級の後遺障害となるための一つの条件です。
平成23年3月に損害保険料率算出機構(後遺障害の等級を判断する団体)が発表した報告書では、以下のような場合には、高次脳機能障害が疑われ、その有無について判断するプロセスに入ることを検討する、とされています。
・事故直後の意識障害が、半昏睡から昏睡で開眼や応答ができない状態が少なくとも6時間以上続いた場合
・健忘や軽度意識障害が1週間続いた場合
②画像
CTやMRIなどの画像のことを指します。
脳内に点状出血が生じ、脳室内出血やくも膜下出血を伴っているような場合には、脳に重大な損傷(器質的損傷)があると疑われ、高い等級の高次脳機能障害になる可能性が高まります。
これらの出血があるかどうかの画像所見は受傷後なるべく早い段階で撮影されていることが望ましいです。
よって、事故で頭を打って昏睡や半昏睡状態になったら、意識が回復しても、事故後できる限り早い段階で画像を撮ることを医師に頼むようにしましょう。
③脳室拡大、脳萎縮の有無
事故後の画像で脳室の拡大や脳萎縮などが認められる場合、その画像は高い後遺症等級に該当する高次脳機能障害が認められるための重要な証拠になります。
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